平成8年11月15日  

法務大臣 殿

                                  申請人の表示

                              国 籍    

                                氏 名  A

                                申請取次者

                                            大阪市北区同心1丁目2番8号

                                            行政書士 中 野 辰 宏

                                     電話06-354-3928



申  請  理  由  書


申請の趣旨

 申請人に「定住者」資格を付与されたく申請します

申請の理由

1.来日そしてOとの結婚

 申請人は、1988年 月 日、日本語学校入学の目的で来日した。当初1年余はC県内の日本語学校で学んだがその後、Oと知り合い、やがて1989年 月同人と結婚した。身寄りもいない異国の地で知り合った同郷出身者のOは申請人にとって頼もしく、その優しい言葉に申請人は励まされ、結婚後は大学にまで通わせてくれるというOの存在は、日本語学校卒業後は日本の大学への進学を考えていた申請人にとって、まさに「足長おじさん」であり、27才の年齢の差を超えて同人に惹かれていった申請人の純粋さは想像するに難くない。

2.O(以下前夫という)の実像と結婚生活

 申請人は、前夫の優しさに何の疑問も持たず、大学にも行かせてもらえるものと信じて同人に嫁した。しかし、現実の生活は結婚前に申請人に語った事実とは大きく食い違い、学校で勉強出来るどころか、逆に生活費を稼ぐために外に出て働かざるをえないような状況であった。そればかりか、家庭をかえりみなくなり、申請人の稼ぎをあてにし、印鑑やパスポートまで取り上げ、「日本の社会では、夫婦の財布はひとつだけだ。俺の言うとおりに働いていればいい」と日本の習慣や習俗を何も知らない申請人を働かせるだけであった。それでも申請人は夫についていこうと健気に働き、子供ができれば夫の生活態度もよくなると考え、祈るような気持ちで産婦人科に通ったことも何回かあった。

 しかるに、前夫の実像はその兄弟の言葉を借りれば「兄は短気で、プライドが高く、気が小さく、気に入らない事があると暴力をふるう、平気で嘘をつき、ずるく、ひきょうで、人間としても信用できないどうしようもない人物」となり、申請人は前夫の実像を知るにつけ、ショックで自殺をも考えたことも何回かあった。

さらに、前夫は、事ある毎に申請人を罵倒し、申請人に暴力をふるい、申請人が悲しみ、苦しむのを見ると益々エキサイトして、サディスティックに申請人を虐げるのであった。

 前夫に虐げられ、自殺まで考えたこともあったが、健気にも「K」のボランティア活動に参加したり、「CON」が主催するボランティア活動に参加したりして「一生懸命生きよう」、「明るく生きよう」と精一杯努力する申請人であった。

3.小職への相談そして離婚

 当職と申請人との出会いは、今年の1月下旬「CON」で相談員をしている社会保険労務士(兼行政書士)のT氏を通じてでありました。「相談に来た女性で昨年の12月に自分でビザの更新をしたが、更新の許可がまだおりていないらしいが、そのほかにも在留資格のことで悩んでいるようなので、話を聞いてあげて欲しい」とのことでありました。

 当職の事務所で語った内容は概ね1.2.に記述したような内容であった。さしあたって、しなければならないことは昨年11月30日に申請している期間更新の結果がどうなっているのかを調べることであったので、2月の初旬に本人を伴って大阪入国管理局に出向き進行状況を聞いたが、「現在調査中なので、もう少し待って下さい」とのことでありました。そして、待ちに待った更新許可がおりたのは4月1日であった。この間数回の相談を受けましたが、離婚の意思が固いこと、離婚をしても日本に残って現在の職場で仕事を続けたいこと等申請人の考えていることがわかりました。「子供でもいれば『定住者』への資格変更が認められる確率は高いけれど、貴方の場合は厳しいものがありますよ」という回答をしながら、「離婚に至った有責配偶者は夫であるし、いわゆる『特別の理由』に該当するケースでは?」等と思いを巡らせていました。「家に帰ると何をされるかわからないから毎日帰るのが怖い」「携帯電話も取り上げられてしまった」等の電話が頻繁に入る様になったので、調停離婚を経て定住者への資格変更を試みるべく、N弁護士を紹介しました。

申請人の相談は小職の手を離れ、N弁護士の手に移りました。そして、N弁護士が離婚調停を申し立てるべく準備していた矢先、「事件」は起きたようであります。あまりにも激しい暴行を受けた申請人は失神し、相当な打撲傷を負ったようで興奮し、ふるえるような泣き声の電話が入ったことを記憶しています。「夫になぐられ・・・警察・・・妹の家にかくまってもらう・・・」等かなり興奮していてよく聞き取れませんでした。小職としては「つらいだろうけれど頑張ってね」というのが精一杯で、慰めようもありませんでした。

 そしてそれから1ヶ月ばかり経過した7月10日頃「昨日、Kボランティアの方に立ち合ってもらって離婚しました」との電話がありました。「弁護士を紹介したのに、どうして協議離婚なんかしたの?定住者資格への変更はもっと厳しくなったよ」とたしなめるような口調で詰問していました。

申請人がいうには「夫は警察に行って離婚した(する?)と言い回っているようなので、もう離婚するしかないと思った」とのことで、「在留資格」がどうなるかとか、「中国に帰らなければならなくなる」というようなことは考える余裕もないくらいに追いつめられた末の最後の決断であったことが察せられました。

4.申請人に定住者資格を(法務大臣の考慮に値すべき特別の理由)

(1)特別の理由

  申請人にとって今回の離婚は「地獄のような生活からの脱出」であり、「人並みの人間らしい生活の回復」でありました。申請人はOとの結婚生活に多くを期待したわけではありませんでした。結婚当初は「大学へも通わせてやる」というOの甘言を信じ、その後はOのまじめな生活態度を望み、生活態度が改まればと子供を望み、最後に夫としての優しさ、人間らしさを望みましたが、そのすべてが裏切られ、虐げられた果ての離婚でありました。

 最終的に離婚を望んだのは申請人でありましたが、申請人を究極の選択に追い込んでいったのは夫であるOであり、「離婚の責任はすべて夫にある」といっても過言ではありません。

 去る7月31日に法務省より発表された、「日本人の実子の外国人親の定住者資格付与」に関する取扱いは、不法滞在者であっても定住者資格を付与するという法務省の画期的な取り計らいでありました。しかし一方、申請人のように「実子」が居ない場合には、離婚した外国人配偶者は帰国をしなさいというのが現在の法務省の方針のようであります。

 しかるに、前述のように申請人の「離婚」は心身共にずたずたに引き裂かれた末の筆舌に尽くし難い究極の選択であり、「日本人の実子」を育てなければならない「外国人親」以上に、同情に値する「特別の理由」に該当する者と思料します。

(2)素行の善良性

  申請人は夫から筆舌に尽くし難いほどの暴力を受け、罵倒され、苦悩しても、「明るく生きよう」「強く生きよう」と常に前向きに生きてきました。また、「自分よりももっと苦しみ、悲しんでいる人たちの力になりたい」と「K」や「CON」が主催するボランティア活動に積極的に参加する等して自己の向上を図ってきました。このように申請人の「素行は極めて善良」であります。

(3)生活の安定性

  申請人は、夫との生活を維持するため、働らこうとしない夫に代わって外に出て働かざるを得ませんでした。スーパーマーケット、ケーキ屋、アイスクリーム製造と様々なアルバイトをしなければなりませんでした。そして、平成4年5月 日からは、現在の職場、「SD大阪工場」に勤務しています。まじめで、几帳面な性格ゆえ上司や同僚からの信望も厚く、申請人が離婚した現在も「いつまでも日本に残って、うちの会社で働いて欲しい」と言ってくれている程であります。現在同社から支給されている給与は月額15万8100円、手取り13万1000円ほどであるが、派手な生活を好まず、趣味も読書くらいという申請人が一人で生活していくには充分な金額である。また、現在は、妹夫婦(日本人と結婚)の家に同居しているが、気持ちの整理ができたら、その近所に小さな部屋を借りるつもりである。したがって、離婚を経験はしたが日本で「独立して安定した生活」を送るだけの基盤はできている。

 また、申請人には中国に70才の父母がいますが、現在は申請人の兄夫婦と同居しており、申請人が帰ることのできる家は中国にはありません。もちろん就職先も、なく、もはや申請人が安定した生活を送ることができるのは「日本」をおいて外にはありません。

(4)結語

  以上(1)、(2)、(3)に述べたように申請人に定住者への資格申請には「法務大臣が考慮するに値する特別の理由」があると思料します。

 1989年 月 日、「日本の大学で勉強しよう」と大きな夢を抱いて来日した申請人にとって、Oとの結婚はまさに地獄のような日々でありました。しかし申請人の周りには「優しい日本人」「親切な日本人」がたくさん居ました。それらの人々に助けられ、励まされながら申請人は「懸命に、ひたむきに」生きてきました。悲しい思い出はあるものの、「日本が一番好きです。日本でずっと暮らしたいです」と申請人は言います。申請人の「人間らしい」生活は今新しく始まろうとしています。こんな申請人に何卒「定住者」資格をお与え下さいますようお願い申しあげます。

5.添 付 書 類

  ・申請人の陳述書                  1通

  ・N弁護士の報告書                 1通

  ・離婚届受理証明書                 1通

    ・外国人登録済証明書                1通

  ・申請人の在職証明書及び源泉徴収票     1通及び4通

  ・申請人の市民税納税証明書             1通

  ・身元保証書及び身元保証人の印鑑証明書      各1通

  ・身元保証人の在職証明書及び源泉徴収票      各1通

  ・身元保証人の市民税納税証明書           1通

  ・診断書                      3通

    ・嘆願書                      2通

  ・ボランティア活動に関する書面及び写真その他